トップインタビュー2022年11月期の業績と今後の成長戦略

代表取締役 執行役員 社長 武川 義浩

代表取締役 執行役員 社長
武川 義浩

当期の好調な業績を足がかりに、
さらなる飛躍を図ります。

成長の鍵は、優秀な人材の獲得と
人材育成。
新設した人材開発室が中心となり、
エンジニアの採用と育成に力を
注ぎます。

ソリューション、半導体、先進技術ソリューション、3つのカテゴリーについて、当期の業績と今後の成長戦略について武川社長にお話をお伺いしました。
当期(2022年11月期)の振り返りをお願いします。
3つのカテゴリーがうまく噛み合って業績が拡大、社員ひとり一人の成長も大きく、過去最高益を達成。

2022年11月期の通期業績は、売上高32億5,600万円(前期比19.2%増)、営業利益は6億1,700万円(前期比49.6%増)。東芝グループ、日立グループ、キオクシアグループといった主要取引先の開発案件が堅調に推移し、3つのカテゴリーすべてにおいて増収、全社の利益も過去最高益を達成いたしました。
事業分野ごとに見ると、業務アプリケーションの開発およびシステムの運用・保守を軸とするソリューションカテゴリーでは、半導体メーカーから工場内システムをはじめとする基幹システムの開発案件を受注。リソースの確保が厳しい時期もありましたが、社員ひとり一人の成長と頑張りによって過去最高益を達成いたしました。
半導体(NAND Flashメモリ)工場のITインフラの構築、システム運用・保守、ヘルプデスク業務が主体の半導体カテゴリーでは、主要取引先からの継続受注により安定的に収益を確保。四日市事業所(三重県)と北上事業所(岩手県)でのエンジニア採用が順調に進んだことによる効果も大きかったと考えています。
そして人工知能(AI)関連製品の研究開発支援を行う先進技術ソリューションカテゴリーでは、日本電気株式会社、オムロン株式会社をはじめとする大手電気機器メーカーとの取引が拡大。案件としてはAIソフトウェア開発やアルゴリズム解析などの受注が増えてきました。
その一方、人材採用については、毎年10%の増員という目標にわずかながら届きませんでした。新卒者は順調に成長して定着していますが、人材獲得競争が激化するなかで即戦力の中途採用者数は伸び悩み、今後の課題として残りました。

2022年11月期業績
売上高
32.56億円 前期比19.2%
営業利益
6.17億円 前期比49.6%
当期純利益
4.40億円 前期比49.5%
2023年11月期の見通しと今後の成長戦略についてお聞かせください。
東芝グループ、日立グループ、キオクシアグループに続く4つめの柱を構築するための足がかりをつくります。

2023年11月期の通期業績予想は、売上高37億円(前期比13.6%増)、営業利益は7億円(前期比13.3%増)、当期純利益は4億9,500万円(前期比12.5%増)に設定しました。
主要取引先の動向について上期に少し不透明なところがありますが、大規模なシステム開発案件の継続受注等による増収を見込んでいます。来期の目標は東芝グループ、日立グループ、キオクシアグループに続く4つめの柱を構築するための足がかりをつくることです。リスクを分散しながら得意分野を伸ばしていけるように、これからの3年間でポートフォリオを組みたいと考えています。
特に、2022年7月に開設した熊本事業所を拠点として、ソニーグループの半導体関連企業からのシステム開発や保守運用サービスの受注拡大を目指します。当面の目標は、世界最大の半導体ファウンドリー・TMSCの工場が稼働する2024年度末までに九州地区でのビジネスを軌道に乗せること。九州は半導体製造に関するサプライチェーンが集結しており、今後は半導体テクノロジーの一大拠点となる可能性がありますので、将来的な拠点拡大も考えていきます。
先進技術ソリューションカテゴリーでは引き続き、AIを開発中のお客様へのアルゴリズム開発支援を推進して収益基盤の安定化と拡大を図ります。
また、オンリーワン・テクノロジーの獲得を目指し、東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターとの共同研究開発に注力します。現在の最重要テーマは、スピントロニクス技術を用いた次世代メモリ「MRAM」とAIの融合です。当社はこの研究活動のなかで、これらに関するソフトウェアの研究開発を担当しています。「MRAM」の消費電力は、現在のメモリの100分の1から1000分の1。量産が実現すればあらゆることが変わり、当社のビジネスモデルにも様々な可能性が生まれます。4~5年後には実用化できると考えていますので、期待してお待ちいただければと思います。
そしてこれらの成長戦略の鍵は優秀な人材の確保です。特にAI分野におけるエンジニアの獲得競争は激化していますので、待遇面の向上、新卒採用の強化、教育カリキュラムの充実という3つの施策をもって人材開発と採用の強化を図っていき、状況によっては、M&Aによるエンジニアの増員も検討してまいります。

人材開発・採用強化の3つ施策
新卒採用の強化 ・人材開発室の新設 ・採用チャネルの多様化 ・コーポレートサイトの採用ページの刷新|教育カリキュラムの充実 ・新人研修カリキュラムの刷新 ・資格取得手当の充実 ・中堅層社員向け教育カリキュラムの拡充|待遇面の向上 ・業績連動賞与の継続 ・給与水準の見直し ・福利厚生制度の拡充 新卒採用の強化 ・人材開発室の新設 ・採用チャネルの多様化 ・コーポレートサイトの採用ページの刷新|教育カリキュラムの充実 ・新人研修カリキュラムの刷新 ・資格取得手当の充実 ・中堅層社員向け教育カリキュラムの拡充|待遇面の向上 ・業績連動賞与の継続 ・給与水準の見直し ・福利厚生制度の拡充
株主の皆様へメッセージを
お願いします。
すべての社員にとって働きやすい環境を維持しながらサステナブルな経営を目指してまいります。

当社が上場後も成長を加速している最大の要因は、東芝グループ、日立グループ、キオクシアグループといった主要取引先から長期的な開発案件を受注できていることにあります。長期的な案件のメリットは、初期段階で躓いても挽回できる機会があること。単発のプロジェクトのように目の前の売上を獲得するためにコストダウンと納期に追われ、残業を繰り返すことがないので、社員は気持ちに余裕を持って仕事と向き合っています。そしてそのなかでお客様とのコミュニケーション力を磨き、マネジメント力を高めています。エンジニアの増員は、この先さらに困難になっていくと考えられますが、採算性の高い長期的な開発案件に携わりながらスキルアップできることは、人材採用において大きなアドバンテージとなります。そこに注目している有能な人材を採用し、働きやすい環境のなかでじっくり育てていく。それが企業価値の増大につながり、ひいては株主の皆様への還元になると信じています。
当社はまだまだ成長途上であり、当面は投資を優先的に考えていますが、配当方針に基づく継続的な利益配当も実施してまいります。また、ESGへの取り組みも強化し、サステナブルな経営を目指してまいりますので、これからのティアンドエスに大いに期待していただきたいと思います。

配当方針についてはこちら

数字で見るT&S

会社を表す数字

  • 売上高

    2022年11月期に過去最高を更新
    2023年11月期は37億円を目指します。

  • 営業利益、営業利益率

    2022年11月期にともに過去最高を更新
    収益の向上を継続しております。

  • カテゴリー別売上構成

    すべてのカテゴリーにおいて増収
    特に先進技術ソリューションは44.9 %増加。

    2022年11月期

従業員を表す数字

  • 従業員数
    304名
  • 平均年齢
    37.5歳
  • 職種の割合
    エンジニア92.4%、営業1.3%、管理部門 5.9%

    ※2022年実績

事業部紹介
ー先進技術ソフトウェア事業部ー

AIアルゴリズムとソフトウェアの受託開発、
産学協同研究をリードするディレクターに聞く
先進技術ソリューションカテゴリーの
現在とこれから。

様々なサービスを提供している当社ですが、事業領域を「ソリューションカテゴリー」、「半導体カテゴリー」、「先進技術ソリューションカテゴリー」の3つのカテゴリーに区分しております。
今回はそのなかの「先進技術ソリューションカテゴリー」から先進技術ソフトウェア事業部をご紹介!高森さん、武内さん、ロペスさんに詳しいお話を聞きました。

【プロフィール】
先進技術ソフトウェア事業部 先進技術ソリューション部

高森 統|ディレクター兼部長 2018年入社(写真奥)
武内 聡|ディレクター 2019年入社(写真右)
ロペス グリベール ロベルト|ディレクター 2019年入社(写真左)

Q1先進技術ソフトウェア事業部の特徴と
皆さんの役割を教えてください。

3人ともプレイングマネージャー。
お客様への提案・交渉も行います。

高森:先進技術ソリューション部は、3つのグループで編成されています。1つめがアルゴリズムグループ。AIアルゴリズムの受託開発を行っています。2つめがソフトウェアの受託開発グループ。画像に含まれる膨大な情報を軽快に処理するプログラミングが得意なエンジニアが集まっています。そして3つめがR&Dグループ。東北大学との産学共同研究をいくつかのテーマで行っています。私の役割は、この3つのグループの統括管理。状況に応じて実装作業も担うプレイングマネージャーです。

武内:私とロペスの役割は、AIアルゴリズムの中身を検討・精査して実装に導くこと。R&Dグループのサポートも行っています。

ロペス:お客様の課題を理解し、プロジェクトの方針を決めてエンジニアに実装させるのがディレクターの仕事です。私も高森と同じく、状況に応じて実装作業に参加します。

高森:他の事業部との体制的な違いは、専任の営業担当がいないこと。受託案件、研究開発案件とも、要求される技術レベルがきわめて高く内容も特殊なので、営業担当を置かず、お客様との交渉・提案も私たちが行っています。

Q2どのような案件を進めているのでしょう?

受託開発はAI画像解析技術の共同開発が中心。
R&Dでは「MRAM」の実用化を目指して
研究開発を継続。

「MRAM」

高森:受託開発は大手電機メーカーとの共同開発と技術支援が中心で、最近の事例のひとつに産業用の外観検査装置に組み込むAIがあります。工場の生産ラインにカメラとセンサーを設置し、高度な画像解析技術で製品の欠陥や傷を検出・分析します。従来の画像解析は与えられたパラメータから外れると認識できないこともありましたが、現在はAIが柔軟に判断します。学習させたものと違う情報を与えたとしても傷や欠陥を見分けることができる。それがディープラーニングのメリットです。

ロペス:この画像解析技術は、従業員の入退室管理や、クルマの自動運転、医療現場におけるエックス線検査の自動化にも応用できます。

武内:お客様の依頼は画像解析が中心ですが、当社はそこに特化しているわけではありません。小型デバイスへの組み込み、ロボティクス技術を使ったシステムの研究開発支援なども行っています。お客様が当社を頼りにされている理由も、そこにあるのだと思っています。

高森:R&Dについては、東北大学と次世代メモリ「MRAM」の実用化に向け、「MRAM」を扱うために必要なソフトウェアの研究開発を進めています。
「MRAM」の消費電力は、現在のメモリの100分の1から1000分の1。スマホのバッテリー持続時間が飛躍的に延びるなど、生活を大きく変える可能性を秘めた技術ですので、ぜひ注目していただきたいですね。

Q3今後の目標や夢、チャレンジしたいことは?

デバイスに「MRAM」や推論エンジンを組み込み
医療や科学技術、教育分野の発展に貢献したい。

高森:大前提としてあるのは、3つのグループの取り組みを先進技術ソリューションカテゴリーの主要ビジネスに育てるということ。R&Dはただちにビジネスと収益に結びつくわけではありませんが、「MRAM」の市場規模は今後、飛躍的に成長します。そこで独自のビジネスを展開して収益化するためには周辺技術の拡充が不可欠だと思います。「MRAM」が実用化されるとあらゆるデバイスが進化するので、エンジニアもディレクターもやりたいことがたくさんあるでしょうね。

ロペス:「MRAM」が実用化されたら医療機器などもよりコンパクトになる。私の目標は、お客様とともに使いやすい医療機器をつくり、そこに自社開発の推論エンジン(知識をベースに答えを導き出す人工知能システム)を組み込むこと。それによって診断精度の向上と用途の拡充を図り、医療の進歩に貢献するという夢です。

武内:私は科学技術、教育分野での活用を目指したいですね。特に教育分野はこれから伸びていく領域ととらえています。教育者のためのデバイスにするのか、子どもたちにIT技術を身近に感じてもらうためのツールにするのか。想像するだけで楽しいですよ。いずれにしても一足飛びにできることではないので、現在の受託案件、研究開発を着実に進めながら技術力を高め、製品化に向けたネットワーク形成に取り組んでいきます。