事業カテゴリー区分の変更、人材戦略の現状について、
武川社長にお話を伺いました。
- 2023年11月期の業績を振り返ってください。
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史上最悪と言われた半導体不況のなかで成長を継続して過去最高益を更新。
「半導体業界の比率が高いSIer」という強みを発揮できた1年でした。
成長の継続をテーマに掲げた2023年11月の通期業績は、売上高34億4,200万円(前期比5.7%増)、営業利益6億4,300万円(同4.2%増)となりました。東芝グループ、日立グループ、キオクシアグループといった主要顧客との取引が安定的に推移し、過去最高益を更新しました。近年、最大の課題となっているエンジニアの採用数が当初の計画を下回ったにもかかわらず、これだけの増収増益を確保できたことは、胸を張れる成果と捉えています。
事業分野別の業績を見ると、業務アプリケーションの開発およびシステムの運用・保守を軸とするソリューションカテゴリーは、主要取引先から大型システム開発を受注。DX関連案件をはじめ、主要3社グループ以外の取引先からの請負件数も大きく伸長しました。
半導体(NAND Flashメモリ)工場のITインフラの構築、システム運用・保守、ヘルプデスク業務が主体の半導体カテゴリーでは、主要取引先からの受注が継続。史上最悪と言われた半導体不況のなか、一部の取引先からコスト削減協力の要請はありましたが、影響は限定的で増収を確保。「半導体業界の比率が高いSIer」という強みを発揮できた1年となりました。
人工知能(AI)関連製品の研究開発支援を行う先進技術ソリューションカテゴリーでは、前々期の初めに納期が集中した反動で売上高が減少しましたが、目視検査をAIに置き換える外観検査システム開発が順調に推移。新規取引先も増えています。
- 2024年9月期の業績予想と意気込みをお聞かせください。
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新卒者の獲得と育成に軸足を置いた採用戦略の手応えは十分。
一人ひとりのスキルをしっかりと伸ばして部門間の競争意欲を高めていく。
今期から決算期を変更します。取引先の多くが、3月決算を中心とする四半期サイクルで事業を行っていることに合わせるため、事業年度の末日をこれまでの11月末から9月末に変更します。決算期変更により10ヶ月の変則決算となる2024年9月期の通期業績予想は、売上高31億4,200万円(12ケ月換算による前期比9.5%増)、営業利益は5億8,800万円(同9.7%増)、経常利益は5億8,900万円(同9.0%増)、当期純利益は4億100万円(同1.5%増)に設定しました。
増収増益を見込む理由としては、システム開発業界を取り巻く市場の活況が挙げられます。DX化に伴うシステム開発および運用・保守ニーズは依然として旺盛です。ソニーグループとの取引拡大と障害者雇用の促進を目的に昨年4月に設立した長崎事業所の受注案件は順調に増えています。また、先進技術ソリューションカテゴリーでは、前期から開始した生成AI案件や最新AIプロセッサ関連案件が伸長。国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)に対するAI技術関連ソリューションの提供もスタートし、さらなる新規顧客の獲得が見込めるため、今期も堅調に推移するものと予想しています。
また、当社が最も得意とする半導体領域においては、半導体工場における生産調整がすでに収束傾向にあり、今期は急速な市場回復が見込まれます。株主・投資家の皆様にとっては、主要取引先であるキオクシアグループの動向が懸念材料となっているかもしれませんが年内の回復は確実であると考えています。参入障壁が高く、入った後は強固な信頼関係を構築できるのが半導体業界の特徴です。市況が悪化したときは助け合い、良くなったら一緒に喜びを分かち合えるように仕事をする。私たちもそうして成長してきましたので悲観はしていません。九州地区における世界最大の半導体ファウンドリー・TSMCの工場の稼働、新たなデータセンターの建設などで需要も高まっていますので、今期はキオクシアグループに続く第2・第3の柱を構築したいと考えています。
このように半導体領域の成長が見込まれることから、これまでの半導体、ソリューション、先進技術ソリューションの3カテゴリーを見直し、今期から半導体ソリューション、DXソリューション、AIソリューションの3カテゴリーとして再区分します。
これまでソリューションカテゴリーに区分していた半導体工場向けシステム開発案件と半導体カテゴリーに区分していた半導体工場システムの運用・保守サービスをひとまとめにして半導体ソリューションカテゴリーとして区分。ソリューションカテゴリーはDX関連案件の急増と2025年問題への対応を踏まえてDXソリューションカテゴリーとして区分します。また、先進技術ソリューションに先進医療分野を合算してAIソリューションカテゴリーとして区分します。それぞれのカテゴリーの成長度合いを明確に示せるようにすることが最大の狙いです。
いずれにしても、最大のポイントは人材の採用と教育です。優秀なエンジニアの獲得競争がさらに激化するなか、当社は前期に人材開発室を設置しました。目的は新卒者の獲得と育成です。退職者を補うためにキャリア採用も引き続き行いますが、企業として成長を継続するには将来性のある新卒者を獲得して長期的な視点で育てる必要があると判断しました。方向転換の成果はすでに表れており、2024年4月の入社予定者数は昨年の9名を大きく上回る22名。今期の新卒採用人数の目標は、マスター(修士課程修了者)、ドクター(博士課程修了者)を含めて25名に設定しています。
まだ楽観はできませんが、エンジニアにとって働きやすい環境を提供できるのが当社の強みです。取引先への常駐でも長期的な開発案件に携わることができるので未経験からのスタートでも着実にスキルアップできます。採算性も高く、エンジニアは新たなプロジェクトにアサインされるごとに報酬アップを実現できます。残業時間は月平均20時間と業界平均より少なく、オンオフの切り替えが容易なことも大きなアドバンテージとなっています。もともと離職率は高くないので「働きやすさ」「仕事のやりがい」「成長できる環境」を重視する新卒者を採用してじっくり育てていきます。
- 株主の皆様へメッセージを
お願いします。 - 高望みすることなく、5年後、10年後に向けて着実に成長していく姿をお見せします。
今期の業績予想は少し保守的な数字に映るかもしれませんが、株主の皆様には、5年後、10年後に向けて着実に成長していく姿をお見せしたい。高望みすることなく、皆様の期待に応えてまいりますので、今後ともティアンドエスにご注目いただき、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
- 持株会社体制への移行が決定したそうですね。
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今回(2024年2月)の株主総会におきまして持株会社体制への移行が正式に決まりました。従来は、ティアンドエス株式会社単独1社の体制でしたが、持株会社としてティアンドエスグループ株式会社、そして事業子会社となるティアンドエス株式会社を設置いたします。実際の効力発生は6月1日を予定しています。
※持株会社体制への移行のイメージ図
- 持株会社とは何ですか?
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持株会社(ホールディングカンパニー)とは、事業子会社の株式を保有し、グループ全体の経営を行う役割を持つ会社です。持株会社自身は事業を行わず、傘下の子会社が実際の事業を担います。国内では上場企業のおよそ2割弱の会社が持株会社体制を採用しています。
持株会社体制における最大のメリットは独立採算性の徹底と権限委譲の推進です。これによって機動的で柔軟な意思決定が可能となり、幹部候補の育成にもつながります。事業執行機能と管理機能の分離によって、ガバナンスの向上も期待でき、その結果グループ全体の経営力と企業価値の向上につながると考えています。
- なぜ持株会社体制に移行するのですか?
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2016年に2つの会社が合併して誕生したティアンドエス株式会社ですが、その後従業員も300名を超え、ビジネスモデルも多様化してきました。お客様のITシステム開発を請け負う業務から、その運用・保守などのITサービスを提供する業務、そして最先端のAI技術を駆使した高度なサービス提供など、ビジネスの層が厚くなってきました。そうすると、1つの枠組みの中でビジネスを行うことが、だんだん非効率になってくることがあります。日々の意思決定だけでなく、予算管理や人材採用、従業員の評価などの面においても、もっときめの細かい、効果的な制度が必要になってきました。
そこで異なるビジネスモデルを持つ事業単位で分社化を行い、それぞれに合った事業方針のもと、各組織が機敏な意思決定を行うことで、グループ全体の企業価値向上に資すると考えています。
- 段階的に行うようですね。
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目指すゴールは上述したような、異なるビジネスモデル単位での分社化です。しかし、拙速な改革は、時に失敗のリスクも孕んでいます。そこで今回は、3段階に分けて持株会社体制への移行を推進しようと考えました。
第1段階として、この第9期の期首から事業本部制を採用しました。異なるビジネスモデルごとに、まずは事業本部として社内的に独立させ、それぞれの単位で予算を策定し、予算管理を始めました。
続いて、今回の株主総会でご承認いただいたとおり、あらかじめ設立しておいた分割準備会社に旧ティアンドエス株式会社の事業部門を分割移転させます。これが第2段階としてのステップになります。
第3段階については時期は未定としていますが、最終形に向けての準備が整い次第、移行することを考えています。
- M&Aも意識しているのですか?
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持株会社体制への移行の副次的な効果として、M & Aのしやすい土壌を整えられるというものがあります。もともと当社は、過去の合併によって誕生した会社ですし、現在も常にM & Aについては検討を続けています。もしお互いの企業価値向上につながるようなご縁があれば、当社グループの一員としてグループ経営に参画していただけるようなM & Aが実現できれば嬉しいと感じており、そのための基盤として持株会社体制が役に立つのではないかと考えています。
- 上場は維持されるのですか?
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現在東京証券取引所に上場しているティアンドエス株式については、そのまま持株会社としてのティアンドエスグループ株式会社の株式に変わります。従って、株主の皆様の権利については、従来と何ら変わることはありません。
- 決算期も変えられるのですね。
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持株会社体制への移行に合わせて当社の決算期を11月から9月に変更することにしました。当社のお客様の事業年度との親和性を考慮し、より良いビジネス環境を整備する目的で行いました。これにより当第9期の決算期は10ヶ月の変則決算となり、本年の9月30日に次の決算日を迎えることになります。